【字句】「賣」の新字体は「売」。
【解説】出雲国の一地域の女神。歌謡風に語り継がれた系譜の一節と考えられる。
【名義】スサノヲ命▲の活躍した出雲国の肥河(ひのかは)で、現在の島根県斐伊川(ひいがわ)にあたる。武蔵国(現在の東京都・埼玉県)に多い氷川神社とも関連するが、これは出雲国造(いづものくにのみやつこ)の一族が武蔵国造(むさしのくにのみやつこ)となり、移住したことに由来するとされる。
【素性】スサノヲ命▲の系譜において、フハノモヂクヌスヌ神▲の妻としてフカフチノミヅヤレハナ神▲を生んだ。オカミ神▲の娘。
【参照】【記・系譜06】。【記・補足03-8a. 系譜の解釈】。
【解説】イツセ命▲を参照。
【解説】イナヒ命▲を参照。
【解説】楯作りの神。
【名義】不詳。「サチ」は狩猟具(つまり矢)の意か。
【素性】葦原中國の平定において、オホモノヌシ神▲(三輪山の神)の祭祀を行った神の一つ。タカミムスヒ神▲によって楯作りと定められた。
【補足】この前後の部分をオホクニヌシ神▲の祭祀とする解釈もあるが、この一書(二)の展開では三輪山の神に関しての祭祀伝承が記載されたものと見られる。ミホツヒメ▲の説明を参照。
【字句】『日本書紀』の「鵜」は二文字で、「盧」の右側に「鳥」と、「茲」の右側に「鳥」。
【解説】始祖となる人物の父。「うがや」とも訓まれる。
【名義】「天津日高」は天神▲の美称。「日子」は男子の美称。渚(なぎさ)で鵜(う)の羽の葺草(かや)を葺き終らないうちに生まれた男子の意で、説話に由来する神名。
【素性】ヒコホホデミ命▲とワタツミ神▲の娘トヨタマビメ命▲との間に生まれた神。叔母タマヨリビメ命▲を妻としてカムヤマトイハレビコ命▲(後の神武天皇)等の兄弟を生んだ。
【要素】始祖の誕生を語る伝承において、その父神の名として語り継がれていたもの、つまり始祖伝承に附随する神名と考えられる。そのため、移住第一号の始祖(初代・神武天皇)の実際の父親と見なすことはできない。
【参照】【記・系譜05】。
【字句】「藝」の新字体は「芸」。(※ただし本来の「芸」という字とは別字)。「國」の新字体は「国」。
【解説】天上世界から地上世界に降臨した天孫(あめみま・てんそん)。
【名義】稲穂が賑(にぎ)やかに実る意。「アマツヒコ」は天神▲の美称。「ヒコ」は男子の美称。「アメニキシ」「クニニキシ」「クニテルヒコ」等は豊かな天地を表す美称。「ネ」は神名・人名の末尾に添える語。「ギホホオキセ」「キセ」はかなり変化した語。
【素性】マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ命▲とタカミムスヒ神▲の娘ヨロヅハタトヨアキツシヒメ命▲との間に生まれた子。アメノホアカリ命▲の弟(これをヒコホノニニギ尊の子とする記載もある)。地上世界に降臨した後、オホヤマツミ神▲の娘コノハナノサクヤビメ▲を妻としてホスソリ尊▲(『古事記』ではホデリ命▲)・ヒコホホデミ尊▲(同・ホヲリ命▲)等の兄弟を生んだ。
【要素】ヒコホノニニギ尊の地上世界への降臨は、朝鮮半島に顕著な山上降臨型▼の特徴を有し、また、満州やモンゴルに見られる神話観念・即位儀礼との類似も指摘されている。また、人類の始祖(多くは兄妹)が天から孤島の山上に降臨するという東南アジア等の観念とも、その基層は共通すると見ることができる。それ以外にも、アマテラス大神▲と孫のヒコホノニニギ尊との関係と印欧語族の神話との共通性を指摘し、古代ユーラシア大陸に広く分布していた神話観念を想定する向きもある。また、降臨後の結婚に際しては、姉のイハナガヒメ▲を返し、妹のコノハナノサクヤビメ▲のみを選んだことが寿命の理由として語られているが、これは二者択一によって生死が分離するという南方系の死の起源/バナナ型▼の観念で、東南アジアに多く分布する。一方、朝鮮半島の山上降臨型▼の展開においても、二者択一による結婚が見えることから(ただし生死の分離等は見られない)、南方系の死の起源/バナナ型▼が東アジアにおいては結婚の要素に変化して分布していたと考えられる。(日本では寿命の要素として残り、朝鮮半島では要素自体が消失したことになる)。なお、この天孫降臨の展開に関し、朝鮮半島との類似が顕著であることから、この神話を朝鮮半島から伝播したと決めつける歴史学者等がいるが、神話の伝播や分布は複合的なものであって、一方的・直線的な流入と見なすのは早計である。東アジア地域における多種多様な神話形式・神話観念が様々な地域で共有されていたものと見なすべき要素である。(朝鮮半島の王族の移住を示すとする主張等は論外であり、反権力イデオロギーに基づいた陰謀論といわざるをえない。もしその考え方に従えば、朝鮮半島の王族もまたモンゴルや満州から移住したことになるし、朝鮮半島の山上降臨型▼に見える日光感精型▼や卵生型▼も、遡れば中国やインドや西方民族に行き着くことになる。当サイトを訪れる人の中にも、そうした陰謀論に傾倒する者がしばしば見受けられる)。
【参照】【記・系譜05】。
【解説】ヒコホノニニギ命▲の子の一人で、山幸彦▲の役。『古事記』ではホヲリ命▲の別名。『日本書紀』では別名とも別神ともする。海底訪問については山幸彦▲を参照。
【名義】「ホホデミ」は不詳であるが、「ホ」は稲穂、もしくは火。よって稲穂の実りを表した神名、もしくは火中で生まれたことを表す神名。『日本書紀』ではカムヤマトイハレビコ尊▲(後の初代・神武天皇)の美称の一つとしても用いられており、祖神や祖先に対する美称として語り継がれていたものと考えられる。『古事記』の「アマツヒコ」は天神▲の美称。次の「ヒコ」は男子の美称。
【素性】ヒコホノニニギ命▲とコノハナノサクヤビメ▲との間に生まれた兄弟の一人。ワタツミ神▲の娘トヨタマビメ命▲を妻としてヒコナギサタケウカヤフキアヘズ命▲を生んだ。
【参照】【記・系譜05】。
【解説】大阪府泉北郡の聖神社の祭神で、百済系の渡来氏族が信仰した神とされる。系譜の前後の神名は比較的新しい時期(奈良時代か)のものと推測される。
【名義】「日知り」の意で暦(こよみ)を司る神と説明されることがあるが、私見としては、前後の神名を踏まえ、「日尻(ひじり)」の意で、日の沈む地(朝鮮半島)を指すと考える。
【素性】オホトシ神▲の系譜において、オホトシ神▲とカムイクスビ神▲の娘イノヒメ▲との間に生まれた五神の一つ。
【参照】【記・系譜06】。【記・補足04-8a. 系譜の解釈】。
【解説】託宣(たくせん)の神。『延喜式』神名帳に見える大和国葛上郡葛木坐一言主神社の祭神。
【名義】たった一言で告げる意。善悪・吉凶等を判断する神であることを表す。
【素性】第21代雄略天皇が葛城山に狩りをした時に現れた神。『古事記』は雄略天皇が神にびびりまくった様子を描き、『日本書紀』は紳士的にふるまった様子を描く。
【字句】「獨」の新字体は「独」。
【解説】元始において単独で出現した神のこと。『古事記』冒頭では、別天神(ことあまつかみ)▲五柱、及び神世七代▲の最初の二柱、併せて七柱を獨神と記す。『日本書紀』には「乾道独化」「純男」等といった漢文修辞(中国の文献の文章を借用しての装飾表現)が見えるが、基の伝承や記録では『古事記』同様に「ひとりがみ」と呼ばれていたものと推測される。
【解説】不詳。「ひなてり」とも訓まれる。歌謡風に語り継がれた系譜の一節と考えられる。元々は「日名照額田毘道男の娘の伊許知邇神」であったと見る向きもある。
【名義】不詳。系譜の流れを踏まえると、「ヒナテル」は鄙(ひな)=田舎を照らす意で、多くの地方の存在を提示したもの。また、前後に「鳥」の語が見えることから、「ヒナ」は雛(ひな)の意も含むと考えられる。「ヌカ」は額(ひたい)の意で、「ヌカタ」を狭い土地と見ることもできるが、上古における願望の助動詞「ヌカ」とすれば、「タビチ」は旅路。神名を二つに分けて考えるならば、次の「ヲ」は男の意。一つのものと見なせば、助詞「ヲ」か。「イコチ」は「行く」「落ち」の縮まった語、あるいは「行く」「遠(をち)」。(鳥が)遠くの田舎まで行こうとする様子を表わした神名と考えられる。
【素性】オホクニヌシ神▲の系譜において、トリナルミ神▲の妻としてクニオシトミ神▲を生んだ。
【参照】【記・系譜07】。【04-6a. 系譜の解釈】。
【字句】「賣」の新字体は「売」。
【解説】不詳。歌謡風に語り継がれた系譜の一節と考えられる。
【名義】不詳。系譜の流れを踏まえると、「ヒ」は幾つか候補があるが、「ナラシ」は均(なら)す意であろう。あるいは「ヒナ・ナラシ」で鄙(ひな)を均す意。
【素性】オホクニヌシ神▲の系譜において、ミカヌシヒコ神▲の妻としてタヒリキシマルミ神▲を生んだ。オカミ神▲の娘。
【参照】【記・系譜07】。【04-6a. 系譜の解釈】。
【解説】カグツチ神▲の別名。
【解説】カグツチ神▲を参照。
【解説】記紀ともにカグツチ神▲を火神と記す。
【解説】アマテラス大神▲を日神と記す。
【解説】日前(ひのくま)神社の祭神。御神体の鏡。
【素性】天の岩窟に隠れたアマテラス大神▲を連れ戻すために、イシコリドメ▲が作った鏡。紀伊国に鎮座すると記す。『古語拾遺』は最初に作った鏡は不出来であったとする。
【字句】「火」は「火」偏に「漢」の右側。
【解説】ヒハヤヒ神▲の異伝。
【素性】アマテラス大神▲とスサノヲ尊▲の誓約(うけひ)において、スサノヲ尊▲の玉から化生した神の一つで、六柱の男神の一つ。これらの男子は直前の約束通り、アマテラス大神▲の子として引き取られた。男子を六神とするのは『日本書紀』一書(三)のみである。
【字句】「藝」の新字体は「芸」。(※ただし本来の「芸」という字とは別字)。
【解説】カグツチ神▲の別名。
【字句】「火」は「火」偏に「漢」の右側。
【解説】火の神。ミカハヤヒ神▲と対。
【名義】最初の「ヒ」は火の意。「ハヤヒ」は威力のある霊(ひ)の意。火の威力を表す神名。
【素性】イザナキ神▲が火神であるカグツチ神▲を殺害した時、その血が岩々に飛び散って化生した。同時にミカハヤヒ神▲(とタケミカヅチ神▲)が化生した。これらはその時に用いた剣であるアメノヲハバリ神▲の子とされる。『日本書紀』には、ミカハヤヒ神▲を父、タケミカヅチ神▲を子とする記載もある。『日本書紀』一書(三)のみ、ヒノハヤヒ神▲の化生を誓約(うけひ)において記す。
【参照】【記・系譜03】/【紀・系譜03】。
【解説】不詳。歌謡風に語り継がれた系譜の一節と考えられる。
【名義】不詳。系譜の流れを踏まえると、柊(ひいらぎ)の花を摘む様子を表わした神名と考えられる。
【素性】オホクニヌシ神▲の系譜において、タヒリキシマルミ神▲の妻となるイクタマサキタマヒメ神▲の父神。
【参照】【記・系譜07】。【04-6a. 系譜の解釈】。
【解説】大分県の国東半島の北にある姫島か。この島名は多い。ただし、『古事記』の表記としては「めしま」と訓むべきともされる。その島名も多い。
【名義】神名は海中の孤島を表す。
【素性】イザナキ神▲とイザナミ神▲の国生みにおいて、大八嶋國▲に続いて生まれた六嶋の一つ。
【参照】【記・系譜01】。
【解説】イザナキ神▲とイザナミ神▲が最初に生んだ子。出来損ないであったために葦舟に載せて流し捨てられた。この子を流し捨てたという記紀神話の記載が、後に様々な漂着信仰と結びつき、中世に至って蛭子神(えびすしん)に発展した。「エビス」は一般に「恵比須」「恵比寿」と表記されるが、元来は「戎」「夷」「胡」等と表記され、海の外から寄り来る来訪神・外来神を意味していた。こうして習合・発展した蛭子神は後に七福神の一つともなった。出世魚ならぬ出世神の一つといえるかもしれない。
【名義】蛭(ひる)のような出来損ないの子。『日本書紀』では三年経っても足が立たなかったと記し、それを補強する。ただし、『日本書紀』本文で三貴子とともに生まれていることから、これをアマテラス大神▲の別名であるオホヒルメ尊▲に対する「日の御子」と解釈する説もある。これは『南総里見八犬伝』で知られる滝沢馬琴が『玄同放言』において提唱した説である。
【素性】国生みにおいて、イザナキ神▲とイザナミ神▲が最初に生んだ子。次に淡嶋▲が生まれ、両者ともに子の数に含めないと記す。
【要素】イザナキ神▲とイザナミ神▲の結婚・出産には、東アジアに分布する兄妹始祖型洪水神話▼の諸要素が多く含まれており、ヒルコと淡嶋▲は生み損ない型▼にあてはまる。特に台湾や南西諸島の水棲動物型▼では、水棲動物を二度生む要素、天神に理由を尋ねる要素、生まれた子を流し捨てる等、酷似する要素が見られる。
【参照】【記・系譜01】/【紀・系譜02】。